邊田令子さん。シンガポール発ティーブランド”TWG Tea”の創業メンバー(前編)

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Ms. Reiko Heda(邊田令子)

【プロフィール】
年齢:45歳 / 職業:TWG Teaジャパンビジネスダイレクター / 居住国:シンガポール / 言語:日本語・英語・フランス語

今やシンガポールを代表するラグジュアリーブランドとも言えるTWGTea。世界38カ国、800種類以上の茶葉を揃えるティー専門店です。世界各国から様々なバックグラウンドを持った逸材による、インターナショナルでバランスのとれた開発チームを結成。5年余りで大成功を収めました。その勢いは今なおとどまることを知らず、アジアをメインに積極的な海外展開を続けています。

今回はその創業メンバーのひとり、Ms.Reiko Heda(邊田令子さん)にお話を伺いました。 

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  • 茶葉のルーツが詰まったオートクチュール

-TWGTeaについてお聞かせください。

TWGTeaは2007年にシンガポールで誕生した初の高級ティーブランドです。以下の3つがシンガポールを会社創立の地として選んだ大きな理由です。

第1に、シンガポールは主だった茶葉生産国(インド、中国、日本など)のほぼ中央に位置する国であること。

第2に、シンガポールには特徴的な茶文化というものが無くニュートラルであるため、世界中の様々な茶文化を紹介しやすいこと。

第3に、シンガポールは茶葉生産国ではないため、茶葉の輸入が比較的簡単であること。

取り扱う茶葉のクオリティーには細心の注意を払っております。現在は機械で茶葉を摘むことが主流の時代ですが、TWGTeaで取り扱う茶葉は一つひとつ、手で丁寧に摘み取られている高級茶葉がたくさんあります。今やシンガポール土産の定番となったコットン100%のティーバッグにもブロークンやダストと呼ばれる形状の茶葉ではなく、上質なホールリーフ(全葉)を使用しています。インド、ネパール、タイ、ハワイなど世界中に様々な規模の茶葉農園が存在し、現在は38カ国、800種類以上の茶葉を取り揃えるまでに至りました。

これは他のブランドにはないTWGTeaの強みの1つだと言えます。また、茶葉にはそれぞれに異なった歴史があります。私たちは茶葉の歴史やルーツをヒントに、その茶葉のイメージにピッタリなパッケージを作っています。これはもうオートクチュールと言っても過言ではありません。季節限定の茶葉には、その年の流行色を取り入れます。つまり、繊細で歴史ある茶葉とモダンなパッケージが融合して初めてTWGTeaのラグジュアリーティーが誕生するのです。また、ガラスと真鍮を多用したモダン且つシックなデザインのティーサロン、温もりを感じさせる木を基調とした洗練された家具、純白のテーブルクロス、口当たりの良さを追求したティーカップ、行き届いたスタッフのサービス、フードなど、これら全てのものが揃って初めてお客様に最高のおもてなしができると信じております。パッケージはもちろん、店内の家具、アクセサリーなどはすべてインターナショナルなインハウスデザイナーが手掛けています。

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  • シンガポールブランドは高級ブランドである

私たちはシンガポールブランドの1つであることに非常に誇りを持っています。今やシンガポールは常に先を行くインターショナルな国の1つですし、私たちはそんなシンガポールを代表する会社だと自負しています。『メイド・イン・シンガポール』は高級感すら与えるブランドに発展しつつあります。例えばシンガポール航空は、グローバルでラグジュアリーな航空会社として多くの賞を受賞しています。海外進出の際、シンガポールブランドそのものが諸外国から受け入れられやすいというメリットがありました。シンガポールブランドは信頼性が高く、食品の安全面にも厚い信頼があります。そして忘れてはならないのが、シンガポールには茶葉貿易の歴史的背景があること。19世紀、シンガポールは東西の文化の交差点で、茶葉貿易の中心地としても栄えていました。東インド会社による独占貿易が終わり、そして1837年には、シンガポールに商工会議所が設立され茶葉の自由貿易が始まりました。TWGTeaのパッケージに表示されている『1837』はこれを記念して付けられたものです。そこからさらに躍進するために、高級感とトレンド感をブレンドし、現在のTWGTeaが誕生しました。

  • 進む海外展開。日本を皮切りに今やアジア全域へ

海外出店第1号の舞台は日本でした。2010年に東京の自由ヶ丘、続いて12年に丸の内にオープンしました。日本は拡大させやすいマーケットでした。なぜなら食文化が発達し、日本人は目や舌が肥えていて、高級食品や商品に敏感だからです。シンガポールにも多くの日本人駐在員がいるので、一時帰国時のお土産として購入される方も増えてきました。日本に続き、ドバイ、香港、マレーシア、タイ、インドネシアなど多くの国々に進出しています。アジア圏外ではロンドンのハロッズ内やニューヨークのディーン&デルーカ内にも出店しています。今後は韓国、カンボジア、カタールに出店する計画があります

それまで「お茶を楽しむ」という文化が無く、お茶は喉の渇きを潤す単なる飲み物でしかなかったという国もあります。そのような国への進出は、まさにゼロからの出発です。ただ、ゼロというのはある意味、TWG Teaのやり方でできるという楽しみにもつながりますし、とても貴重な経験でした。

  • 感性や知識を磨くことで本物を実感できる

アフタヌーンティーはもちろん、ブレックファスト、ランチ、ディナーも提供しています。あまり知られていませんが、和牛バーガーが人気です。実は私たちの提供する料理やスイーツの中にも、茶葉が使われています。サラダのドレッシング、肉や魚料理のソース、スコーンなどの焼き菓子と一緒にお出しするティージェリーやマカロンなど。茶葉の香りを十分に活かしつつ、料理の素材そのものの風味を邪魔しないようにするのは容易ではありませんが、使い方次第で化学反応ともいえる素晴らしい作品を生み出すことができます。店内のカウンターでは、私たちの知識と経験をお客様とコミュニケーションをとりながら常に提供しています。どのワインを買おうか迷っている人にアドバイスするような感じでしょうか。また、茶葉が育った環境や作られる工程、時には茶葉にまつわる長い歴史や様々なエピソードをお話して、お客様の知識や感性を磨くことにも力を入れています。例えば「このダージリンはヒマラヤのものです。天気の条件が最高の時間帯に、新鮮な新芽の部分だけ一つひとつ手で摘まれます」、「かつて白茶は中国の皇帝に献上するお茶で、その茶葉は処女の人にしか摘むことが許されない珍しく大変貴重なお茶だったのですよ」などです。私たちはお茶を十分理解し、1人でも多くの方にお茶の歴史やストーリーを語り続けたいと思っています。ただ好きだから、美味しいから飲むのではなく、お客様ご自身がお飲みのお茶にどんな歴史や逸話があるのかを知ることによって、違う楽しみ方ができると思っています。

  • 永遠に学び続ける。終わりなき旅

人材育成にもかなり力を入れています。まるでTWGTeaは小さなティーアカデミーそのもの。茶葉に関する知識を習得するだけで少なくとも半年はかかりますし、そこはまだスタートラインです。その後、長い旅が始まり、終わりはありません。私たちは常に学び続けているのです。新種の茶葉を取り入れるごとに、収穫時期、味、バックグラウンドなどをスタッフに教育しています。

  • 日本とシンガポールのブリッジ的存在

-続いて邊田さんのお仕事についてお聞かせください。 

仕事は、日本に関するすべてを担当しており多岐に及んでいます。2008年にTWG Teaシンガポール高島屋店をオープンした時には、週に何回か店頭にも行っていました。日本のお客様が多いお店ですので、少しでもお役に立てればと思って。また、日本に進出するための市場調査、出店場所の検討、パートナー企業探しも私の仕事でした。晴れて自由が丘にオープンすることを決めてからは、日本-シンガポール間の調整に明け暮れた日々でした。シンガポールでは可能なことが日本の規制では許可されない場合もあり、試行錯誤しながら解決策を見つけ、多くの困難を乗り越えて2010年にTWG Tea初の海外1号店として自由が丘にオープンできたときは感慨一入でした。5月25日のテープカットは忘れられません。日本進出後の現在は、日本国内での更なる市場拡大のために、新規お取引さまへのアプローチ方法などをパートナー企業にアドバイスさせていただいたりしております。日本へ出張しお客様と直接お話をさせていただくこともございます。

日本全国に存在する素晴らしい商品を探し出し購入することも重要な仕事の1つです。購入部門のスタッフと共に、こうした日本固有の商品を買い付けるにあたり、価格交渉も私が行います。直接職人さんとお話させていただき、製造工程の難しい部分や工夫されている部分などをお聞きし、それらを店舗のスタッフに伝えるようにしています。販売するにあたって、商品が作られた背景、作り手の思いや作品に対する愛情をスタッフが少しでも理解してくれればと思うからです。

日本から取材にいらしていただいたメディアの方々の対応も致しております。撮影時の立会いから記事の校正に至るまで、TWG Teaのコンセプトがしっかり伝わるように注意を払っております。

後編に続きます