TWG TEA 邊田令子さんインタビュー(後編) 「女性にも最低限の強さは必要」

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-前編はこちら-

TWG Tea Garden at Marina Bay Sands (5)

  • 文化が違うということは無限の可能性があるということ

フランス時代以来の友人であるMr.Taha(現TWG Tea President)から、私と主人(現TWG Tea Managing Director)に、シンガポールで高級茶葉専門店を創設しないかというオファーがあり、それがシンガポールに来るきっかけになりました。その時すでにMr.Taha は日本進出を決めていたようですので、日本人である私に声をかけてくれたのだと思います。言葉や文化のバックグラウンドの違うメンバーがそれぞれの強みを活かし、様々な価値観の中で意見を出し合うことで、お互いを認め、信頼関係を築いてきたからこそ、今の状況があるのだと思います。

  • 海外企業は「日本人らしさ」を求めている

以前から外国には興味を持っていました。高校生の時に隣の席の友人が留学に行き、当時はそんな選択もあるのかと目から鱗でした。その時は海外に行く勇気もなく、英語も嫌いでしたので興味だけ持っていたという感じですね。覚えているのは、日本が嫌だから外国に行くという、いわゆる外国かぶれにはなりたくなかったということです。私は日本人だし、それはどうしたって変わらないのだから。そこでこう思い立ちました。私は将来海外に行こう、でも日本の文化を紹介する立場で海外へ行くのだと。それが今の自分のベースにもなっています。今では日本人らしくあることにこだわっていて良かったなと思います。周りには海外に行ってその国の人たちに同化した人もいます。それはその人自身の選択で、良くも悪くもないのですが、私には少し残念な気がします。海外に渡って、自分が外国人として、その国にいる人と同じ土俵の上で勝負しなければならないとき、彼らとの違いがあった方が強みになるのではないかと思います。海外で、企業が日本人を雇用すると決めた際、求められるのはやはり「日本人らしさ」なのではと思いました。礼儀正しさとか心配りとか。実は、私が海外に行きたい気持ちを知っていて、「じゃあ、行ってやってみれば?」と背中を押してくれた人がいました。私が29歳の時ですが、この年齢で良かったと思います。若過ぎると経験もなく、むしろ日本で勉強することがたくさんある。ある程度経験して、自信もついてきて初めて「これからここ(日本)にずっといて経験することが果たしてあるだろうか、もしかしたらないかもしれない。じゃあ外に出てみよう」って思えた気がします。海外に出て初めて、女性も強さを持っていてもいい、強さを表現しても恥ずかしくないという気持ちになりました。

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  • 女性にも最低限な強さは必要

最初は短期でフランスに渡りました。1997年以降、日本とフランスを行ったり来たりしていた間、日本でフランス語の集中特訓コースを受け、99年から本格的にパリの語学学校で勉強しました。それまでは留学の経験はなかったので、英語は日常会話レベルでしたし、フランス語の知識や文法は完璧でしたが会話力はほぼゼロでした。それでも新しい土地に行くことや新しいことを始めるのが好きで、それに自分を向上させたい気持ちが手伝い、「行っちゃおう!」という感じでした。フランスに語学の勉強をするために行ったわけではないのに、徹底的にやらないと気がすまない性格ゆえに、初級フランス語コースから始めて、最後は上級ビジネスフランス語の商工会議所試験で「Très Bien」の成績を収めることができました。学校に通いながら日系企業に勤めていた時期は、仕事と勉強の両立をするのが本当に大変でした。毎日学校の宿題が山のように出ましたから。でも、あの時に得た達成感は今の自分を支えてくれていると思います。語学で自分が納得いくところまで到達したところで、ふと、渡仏した理由「何かクリエイティブなことをしたい」という夢を思い出し、ジュエリーの学校に通い自分でジュエリーを作って販売していました。新しいことを始めるのが好きなので、分野が変わることにはまったく抵抗がないのです。フランスに居た時に感じたことですが、女性が「必要な強さ」を持っていて、その強さを表現できる国だと。男性もそれを自然に受け止めるといった感じでした。日本の女性は必要な強さですら隠してしまう。私の母は3歩下がって歩くタイプでしたので、私のことを「あぁ、もうこんなになっちゃって」と思っているみたいでしたけど(笑)。女性自身が強さを隠し、可愛らしさを前面に出そうとするのは、日本人独特のものだと思います。日本の男尊女卑は男性だけの問題ではないのかもしれませんね。

  • スーパーポジティブは育ってきた環境から

30代は動きが激しくて本当に楽しかったですね。色々なことができました。チャンスに恵まれていたのか、前向きな気持ちがチャンスを運んできてくれたのか。色々な方にあって勉強させていただき、色々な思いをしました。もちろん辛い思いから学んだこともあります。自分探しというのもおかしいのですが、自分って一体何だろうと探るために、多くのことに手を出していた時期。私は成功や失敗というものはないと思っています。成功、失敗と決めているのは結局本人じゃないですか。うまくいかなかったことを失敗と言う人もいるかもしれませんが、そのうまくいかなかったことから学ぶものがあれば、それは決して失敗ではなく、それも成功の一過程であると思います。常にスーパーポジティブなのでしょうね、私(笑)。小さい時から父は興味があれば何でもやってみればいいじゃないかというタイプでした。私がアイススケートに興味を持ったら次の日にいきなり靴を買ってきてくれたり、将来は科学者になりたいと言ったらビーカーやアルコールランプなどのセットを買ってきてくれたり。母が常に言っていたのは感謝を忘れない人でいなさいと。そんな両親の影響で、何が起こってもこれは有難いことだと受け入れることができるようになりました。悪いことが起こっても、私が何かを学ぶために起こったことだと感謝しなくてはと。もちろん悟りは開いていませんので無理やりそうだと自分に言い聞かせていた時期もありますけれど(笑)。でも、今は素直に思えますね。さらっと受け入れて次へいこうよって。両親もポジティブ思考だったので恵まれていました。そんな環境で育ってきた土台があるので、例えうまくいかなくても、恐れずに前に進めるし、それ自体がチャンスにつながったのだと思います。それから人との出逢いにも恵まれました。最初に勤めた銀行時代の取締役部長から学んだことも大きかったですね。「誰にでも平等に礼儀正しく接しなさい」と。何より彼自身がそういう人でした。人との出逢いって、自分が何とも思っていなかったら、せっかく出逢っても何も残らないかもしれない。でも常にアンテナを張り、好奇心や探求心があれば人から学ばせてもらえることってたくさんある。それがチャンスにつながると思いますし。そんなことが「成功」という言い方はやはり好きではありませんが、今の仕事をさせていただくことに至った理由ではないかなと思います。日本の若者には成功や失敗はない、それはあなた自身が決めていることだ、と言いたいですね。

  • 勇気をもってとりあえずやってみる

海外の人たちは日本人のことを、良いところから挙げれば「礼儀正しい」、「控えめ」などと思っているのではないでしょうか。ただ、良いところが、ある状況下ではマイナスになる場合もあります。積極性に欠けるとか、引っ込み思案で自分を表現するのが苦手であるといったように。もう1つのマイナス面は、石橋をたたいて、それでも渡らないところでしょうか。失敗を恐れて思い切ったことができない人が多い気がします。試してみる前からあれこれと考えすぎないで、閃きに従うことも時には必要なのではないかと思います。始めてみて、予想外の何かが起こり、思うようにいかなかったとしても、暗中模索しながらゆっくり進み続ける中で新しい良案にめぐり合うのだと思います。私たちは常に先ずはやってみようというスタンスです。プランAを始めてみて違うと思ったらプランBに移ろうかといった具合に。その為には柔軟な考え方とフットワークの軽さが要求されます。こだわりを持ちつつ、それでいてフレキシブルであるというのは簡単なことではありませんが。

  • 愛車のためにマイホームを購入するシンガポールの人々

シンガポールはこんなに小さな国なのに、億万長者の割合が高いらしいですね。ではひとつ、シンガポールらしくて面白いなと思う例をお話します。ジャーナリストをしている友人が、フェラーリやランボルギーニなどの高級車の愛好会のような取材に同行したのですが、彼女はこんな風に言っていました。「高級車を持っている人は1台だけじゃなくて、たいてい数台は持っている。しかも定期的に車を動かさないといけないから、いわゆるペットの散歩と同じ感覚で、車を散歩させる人がいるのよ」と。最近、オーチャード通りに程近い一等地にリビングルームから愛車を眺められるコンドミニアムができましたが、車のために家を購入する人がいるというのも面白いですね。窓の外に浮かぶ高級スポーツカーを眺めながら幸せを噛みしめているのでしょうか(笑)。こういった話をあまり良く思わない人もいるようですが、そういった世界もあるということを知ることができるのも、海外に住む面白さなのではないかと私は思います。シンガポールは若くてエネルギーに溢れる国だからでしょうか、シンガポーリアンはお金を儲けることに後ろめたさのようなものがないような気がします。だからこそリッチな人はリッチであることを躊躇なく表現することができる。国が安全だということも大きな理由の一つだと思いますが、とても高価な車や宝飾品を購入し、それらを家に眠らせておかないで実際に活用して人生を楽しんでいる。わかりやすくて良いと思います。

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  • 季節を堪能しつつ穏やかな人になりたい

シンガポールに来た動機は単純です。楽しそうだから(笑)。それが本当の一番大きな理由で、二度目の大きな転機になりました。申し上げたように、新しい土地で新しいことをするのが好きなので抵抗はゼロでした。万が一、事業が失敗したら、別の会社を主人と2人で探そうかという感じでいましたから。とにかく、楽天家、そしてスーパーポジティブでいること。私の場合、それがいい出逢いを呼び、いい運を呼び込んでくれました。ポジティブなエネルギーは、自分が持つ力以上のことを成し遂げさせてくれると思います。不安・嫉妬・猜疑などのネガティブなエネルギーは誰のことも幸せにはできません。私にとって「幸せ」とは、こうして楽しいことをしながら、こういう考え方で生きていけることそのものですね。今後目指すところははっきり言ってわかりませんし、その時々で目指すものが変わってくるのではないかな。これからも変わらずスーパーポジティブで、年齢を気にすることなく、新しいことにどんどんチャレンジし続けていきたいですね。将来は四季を堪能しながら快適に毎日を過ごせるのが理想です。春と秋は日本、夏はフランス、冬は・・・それほど寒くなく、陽光の降り注ぐ国を見つけます。老後は、笑顔を絶やさず、すごく穏やかな人になっていたいですね。