シンガポール、マレーシア、その向こうに・・・。枕を武器にアジア市場を席巻する北村圭介さん

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北村圭介:34歳/株式会社Kitamura Japan・代表取締役/枕および枕カバー製造・卸・販売/愛知県北名古屋市

世界は一日70億とおりの夢を見る。
そのうちの一つに過ぎないが、しかし男は、一つの大きな夢を、家業の枕で抱いた・・。

「マレーシアでは、この4か月でもう1,000個くらい売れているんですけど、海外へ販路を拡げる試みは、四代目の私になってからです。」
大正時代に名古屋で創業された「まくらのキタムラ」は、もとは綿布の卸商であったが、先代の時に「ジムナスト」という「快眠枕」が自社開発され、29歳で会社を継いだ三男坊の彼により、ネット直販や小売りに力を入れることとなった。昨今、家業の商売が継がれる割合は65%に過ぎないというが、三男坊でしかも家業を継ぐ決断に迷いやその後の苦労はなかったのだろうか。

mk家業を継ぐ決断

「浅田真央、安藤美姫の卒在で知られる中京大学に入り、健康教育学を専攻していました。在学中にアメリカのコロラドに1年留学。教員になるつもりでしたが、なんとなく親の会社が気になるようになり、就活もしていませんでしたし、自然な形で親の会社に平社員から入社することになりました。当初、私が継ぐ筈ではなかったのですが、会社が段々大変になっていく中で、兄弟の中で仕事の経験を積んでいた私にお鉢がまわって来たわけです。自分に務まるか?とも思いました。しかし、入社当時から営業、販売に力をいれてきましたし、OEMいわゆる下請に将来はないとの考えが、自分を含め、社内の大勢でもあり、それまで販売の為の子会社をつくり、顧客開拓やマネージメントの経験を積んでもいましたので決断したわけです。」
社員でいるとき、売り上げが落ちて、資金繰りで苦労している親の姿を見て、自分の無力さに悔しい思いをしていたという。三代続いた会社を父は一人で背負っている姿を見て、申し訳ない思いがあり、恩に報いるにはどうしたらよいか、自分の力を試したいという意地にも似た思いもあったという。そこで、どのように売り上げを上げたら良いかの試行錯誤が続く。

売上を上げる試行錯誤

「最初は仕事量を増やしたい一心で、目星をつけたのは、ホテルとか旅館とかそういうリネン関係をターゲットにして、営業をずっとおよそ全国千件とか二千件とか話したり手紙書いたり行ったりっていうのを三年くらい、ところが、正直ほとんど売れなくて、その道は一回やめて、百貨店さん、小売店さんなどに自分達のオリジナルなものを売っていこうとやりはじめたのが入社して五年、六年くらいたった時。また、ちょうどインターネットが普及してきて、楽天やアマゾンのようなEC(電子商取引)というのがメジャーになりつつあったので、よさそうだなというサイトに1件1件アプローチをかけて、営業していきました。」
卸しや下請けでなく、消費者に近いところでの販売の場合、消費者からのレスポンスの収集を商品開発、販売戦略のマーケティングに生かすことができる。
「それは肝だったとおもいます。今の主力の商品の前に二、三種類いろいろ作り、地元の量販店などに何度も行って担当者とも人間関係も出来たところで、ちょっとお前面白いからやってみろよ、と言われ商品を店頭に置き、自分も店頭に立ち、実際ベッドがあるところで接客したりとか、試してもらったりとかしました。うちの商品以外の物もわざと販売してみたりとか、お客様の指摘を少しずつ積み重ねていったというのはありますね。付加価値を自分の商品につけたいし、それを伝えたいのですが、こちらの言いたいこととお客様の知りたいところにギャップがあって、これじゃいけないなと思い、もう少し向こう側から見やすいようにしなければいけないということで、ホームページのデザインもそうですし、パンフレットの作りこみの工夫をしていきました。」
そうやって、枕商品をブランド化し、代替わりを通して、顕著に売上を上げるまでになった。

枕枕の蘊蓄(うんちく)が許されるなら

ところで、睡眠の姿勢は、世界70億人、其々である。国、民族、文化、習慣、考え方によって千差万別。だからマーケットは、無限大。
「基本的に外国の人って仰向けで寝ることがすくないんですよ。だいたい横とかうつ伏せにして寝るっていうことが非常に多いので、諸説あると思うんですけど、外国の人はけっこう頭の形を気にする人が多くて、赤ん坊の時から後ろがつぶれるから横向きとかうつぶせで寝かせていたから仰向けで寝られなくなった、だから外国のホテルでも大きな枕が2、3個、日本人にとって寝にくかったり、高すぎたりというのは、横で使ったりクッションで胸の下に使ったり、抱き枕的に使っているっていうかんじですね。とある大学の先生が、うつぶせで寝るのがいいっていっていますが、一理あると思います。横向きとかうつぶせで、舌の根が落ちないようにすることで、気道が確保されて睡眠中でも酸素が脳に回って体にも回るっていう。
蘊蓄を許されるなら、日本でも、右を下にして寝るっていうのは昔からそうですよね。胃の形と、あとは心臓の位置ですよね、左が下だと心臓が苦しいってことがありますから左を上にした方が楽、横向きになったら下からの高さが必要になってくるので何かいれるっていうのが枕。枕の起源の話になると二足歩行をし始めた時点で世の中には枕が必要になってきているはずなんですね。二本足になって、頭が大きくなってごろんと横になると頭が安定しないので手を入れたりする。でも手を入れて寝ると血行が悪くなり、手がしびれて目が覚めたりするので、近くにある石をいれたり、折れた倒木に頭をのせたりして、だから枕という漢字は左は木偏で、右側は人間の体って言ってますがそういう語源もそういうところから来ると思います。」

海外進出のきっかけ

満を持してその海外マーケット進出の機会が巡ってきた。昨年の年賀状に「海外販路を足掛かりを作る」と認める。宣言してみるものである、「有言」そうすると環境も動いてくる。そうなれば「実行」あるのみ。
イタリアの「サローネ国際家具見本市」で知り合った中国人バイヤーの伝手で、300個、600個と輸出販売。3年で1000万円位の目標でいたが、今のペースで行くと結構早い段階でそれは達成できると確信する。更にマレーシアには自ら出向き、良い枕の肩こりや頭痛等健康への効用をセミナーで啓蒙し、販売に繋げている。
「売値を日本より安くしている訳ではありません。ただ、日本に売っているネットで買えるものを向こうで売るのでは価格があわないので、オリジナル仕様にしてほしいとの、仕様変更の要望は聞いて、少し向こうの仕様にしています。オリジナルですよ、何処にも売っていないですよって言って売ってもらっていますけど。枕に一万円くらいはかけられる層が相手ですね。今後、小売店を相手にするとか、できるだけ販路をひろげていこうというのは考えています。いまのところは、マレーシア、シンガポール、インドネシア、ベトナム、ブルネイはもうこのバイヤーさんに独占販売でお願いしているので。」
枕へのこだわり、ニーズは、やはりある程度文化レベルが高いヨーロッパかなとも最初は思っていたそうであるが、今やアジアがその状態に。なかんずくシンガポールは、アジアとヨーロッパの文化が融合しているマーケットであり、中東やヨーロッパ進出の足掛かりの拠点ともなる多民族国家である。
8歳の時の家族と行った始めての海外旅行がシンガポール。その時、日本を見たり、自分を見たりしたことが、発想の原点にあるのかも知れないという。

kt2人を大事にするというDNA

そして、イタリアでの出会いが、海外進出の切っ掛けになったように、「人」こそ財産であるという。
「今四代目ですが、我が家に特に家訓といったものがあったわけではありません。言葉として残ってなくても、自分がDNAとして感じられているものとか、たぶん大事にしていたのは、友達が多かった、父も祖父も人付き合いが多かった印象がありますので、人付き合いを非常に大事にしろよっていうのを小さいころからおそわっていましたんで。いろんな人につきあいをして八方美人では意味が無いので、ちゃんと深く付き合いなさいというのを大事にしてた、約束を守るとか時間を守るとかいうあたりまえのことにかえってくるとおもうんですが。今、ジャンルの違う人と日本のモノづくりのためにフェイスTOフェイスのネットワークをつくるNPOの支部代表をやってます。異業種間の交流が自分にとってはプラスになっていますね。」
発想の壁、人の壁を作らないボーダレスこそ、この若き経営者の生き方かも知れない。
「現在6ヶ国ですが、3年後には20ヶ国以上へ市場を広げるのを目標に、10年後弊社が100周年を迎えるころには、メイドインジャパンの快眠を世界中に届けていきたいです。小さなメーカーでもできるぞ、とパイオニアになれればと思っています。」

北村圭介さんのブログ http://www.kabu-kitamura.com/makulog/

(文責:インタビューを基にボーダレスワーカー編集部で構成)